＜仙腸関節障害の診断と治療＞
　　　　　　　　仙台社会保険病院整形外科　村上栄一先生より 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　
仙台社会保険病院で整形外科をしております村上栄一です。この度、釧路にお招き頂き、貴重な講演の場を与えてくださった釧路労災病院の脳神経外科部長・井須豊彦先生に深く感謝申し上げます。
少しお話しただけで、井須先生が患者さんの痛みを取ってあげる方法を真剣に模索されている先生であることが判り、大きな共感を覚えました。また、今年の6月に井須先生の部下であられる森本大二郎先生が当院に仙腸関節ブロックの研修に来られ、その後、仙腸関節由来の患者さんを的確に診断されていることに感動しております。
それでは、私が12年間研究して参りました仙腸関節からくる痛みについて少々述べさせていただきます。
仙腸関節は仙骨と腸骨で形成される骨盤の関節です。この関節に過度な負荷がかり、関節にズレを生じて痛みがでます。この痛みは決して妊婦さんに関係する痛みではなく、老若男女に起こるありふれた痛みです。特徴は腰臀部から下肢および下腹部から股関節にかけての痛みを訴える例が多く、座位、痛い方を下にした側臥位が辛いといいます。しかも、この痛みの泣き所はMRI,CTで異常が見られないことです。そのために多くは見逃されているのが現状です。中には、心因性の疼痛を疑われ、精神科を受診する患者さんも多く、詐病と誤解され、職場・家庭で孤立し、鬱病になっている方も少なからず居られるようです。
仙腸関節へのブロック注射が診断と治療に有効なのですが、これでもダメな場合には最終的に仙腸関節の固定手術しか救済手段がありません。この痛みに手術を行っているのは現在の所、仙台社会保険病院だけです。　是非、MRI,CTで異常の出ない仙腸関節からくる腰痛があることを、患者さんにも医師の皆様にも認識してもらいたいと思っております。