私は、昨年(2007年)9月に三輪書店より手術書を出版しました。普通の手術書ではなく、釧路労災病院脳神経外科で経験した症例をまとめたものであります。脊髄外科を専門にしていない同門の先生方の中には私が釧路で脊椎脊髄外科をしていることを知らない方がいると思います。私は昭和49年に同期4人（越前谷幸平、上山博康、野村三起夫、岸原隆）と共に脳神経外科に入りましたが、決して脊髄外科医になろうとしたわけではありません。他の同期の連中と比べると手術は上手ではなく、先輩の先生方にはたびたび叱られたものです。脳神経外科医には向いていないと思い、神経内科、神経放射科を研修しましたが、伊藤輝史先生、岩崎喜信先生に誘われ脊髄外科の道に入ってしまいました。脳血管障害や脳腫瘍の手術には向いていなかったが、脊椎脊髄外科の手術にはむいているのかもしれません。本書を読めば、私が釧路労災病院で行ってきた脊椎脊髄外科手術の変遷がわかります。また、＜神経外科医のつぶやき＞の欄を一読していいただければ、私の手術に対する考え方を理解していただけると思います。手術が上手でない外科医でなければ分からない視点もあるものです。本の出版で終わりではなく、今後も脊椎脊髄外科の道を歩んでいきたいと思います。ただ、年齢に見合った神経外科医になることも必要かなと思っており、今後は末梢神経外科を専門としたい希望があります（最近、末梢神経疾患の手術を多数行っています）。手術以外のことでは、脊椎脊髄疾患のセカンドオピニオン外来、市民講演会活動、後輩の教育に力を注ぎたいと思っております。
本書を読んでいただき、ぜひ、若き同門の先生方が脊椎脊髄外科の道に入ることを熱望しています。
　　　釧路労災病院脳神経外科　井須豊彦